FIELD / 八重山自然録 2026.09.11

アイフィンガーガエルの子育て。オタマジャクシのごはんは母親の卵

石垣島・西表島に生息するアイフィンガーガエル。竹筒や樹洞の小さな水場で、母親が産む栄養卵を食べて育つオタマジャクシの不思議な生態を紹介します。

TEXT & PHOTO / AYADERA

この記事は公開されている研究資料と生物情報を確認して作成しています。観察するときは、産卵場所の水や卵に触れないようにしてください。

茶色くて、小さくて、木の幹にいると見落としそうなカエル。アイフィンガーガエルの面白さは、顔だけでは分かりません。竹筒や樹洞にたまった、ほんの少しの水。その小さな水場で、母親から食事をもらいながら育つオタマジャクシがいます。

SPECIES NOTE

アイフィンガーガエル

  • 学名:Kurixalus eiffingeri
  • 分類:アオガエル科
  • 分布:日本では石垣島・西表島。国外では台湾
  • 体長:およそ31〜40mm
  • 暮らす場所:湿った森林や、その周辺の樹上
アイフィンガーガエル
褐色の身体と大きな目。木の幹や葉の上では、背景によくなじむ。

FIELD MARK 01

派手ではない。でも、目が合う

身体は灰褐色から茶色で、背中には不規則な模様があります。木肌や枯れ葉の色に近く、ライトを当てても輪郭がすぐには見えません。先に見つかるのは、光を返す目だけということもあります。

夜の林で聞こえる声は、短く高い「ピッ、ピッ」という感じ。大合唱というより、暗い場所のどこかから小さく呼ばれているように聞こえます。

このカエルの主役は、大人より竹筒の中にいる。

NURSERY 02

水たまりではなく、木の中で育つ

多くのカエルのオタマジャクシは池や水田で見つかります。アイフィンガーガエルが使うのは、水がたまった樹洞や、折れたり切られたりした竹の空洞です。

こうした植物のくぼみにたまる小さな水場は、フィトテルマと呼ばれます。池のように広くはなく、入ってくる落ち葉や小さな生物も限られる場所です。安全そうに見える一方、オタマジャクシの食べ物は多くありません。

夜に観察したアイフィンガーガエル
木や竹にできた小さな水場が、卵とオタマジャクシの育つ場所になる。

TROPHIC EGGS 03

オタマジャクシのごはんは、母親が産む卵

卵がふ化したあと、母親は小さな水場へ戻り、受精していない卵を産みます。オタマジャクシは、その「栄養卵」を食べて育ちます。

2000年に発表された台湾での研究では、母親が繰り返し水場を訪れ、幼生へ栄養卵を与える行動が報告されています。水の少ない閉じた場所で育つために、親が食べ物を運んでくる。カエルでは珍しい子育てです。

母親による子育てを報告した研究を見る ↗

NO POOP 04

しかも、カエルになるまでウンチをしない

2024年には、さらに変わった生態が報告されました。アイフィンガーガエルのオタマジャクシは、変態して小さなカエルになるまで、腸の中に排泄物をためていたのです。

水の量が少ない場所で排泄すると、水質が悪くなりやすくなります。研究では、変態まで排便を控えることが、兄弟と一緒に暮らす小さな水場を汚さないための適応である可能性が示されています。

2024年の研究「Phytotelmata-dwelling frog larvae might exhibit no defecation」を見る ↗

WATCH 05

竹筒を見つけても、水をのぞき込まない

水のたまった竹筒や樹洞を見つけると、中を確認したくなります。でも、その少量の水が卵やオタマジャクシの生活場所かもしれません。

観察するときにしないこと

  • 竹筒を傾けたり、中の水を出したりしない
  • 卵やオタマジャクシを取り出さない
  • 長時間ライトを当て続けない
  • 見つけた場所が分かる情報を不用意に公開しない

小さな水場に、子育ての仕組みが全部ある

母親が食べ物を運び、オタマジャクシは水を汚さずに育つ。竹筒や樹洞の中には、狭い場所で命をつなぐための仕組みが詰まっています。

夜に大人のカエルを見つけても、その近くの竹を探し回る必要はありません。見えないところで続いている子育てまで想像できたら、それで十分です。

夜の観察時の距離やライトについては「夜の生きもの撮影で気をつけたいこと」、持ち物は「石垣島の夜の生きもの観察、何を持っていく?」にまとめています。

参考:東京動物園協会「Eiffinger’s Tree Frog」/Kam et al.(2000)Behaviour 137:137–151/Ito & Okada(2024)Ecology 105:e4428